局所麻酔の種類などについてかんたんに説明します。
参考にしてみてください。
目次
局所麻酔法
局所麻酔法は、3つに分けることができます。
表面麻酔、浸潤麻酔、伝達麻酔です。
さらに伝達麻酔は、脊髄くも膜下麻酔(脊椎麻酔)、硬膜外麻酔、神経ブロックに分けることができます。
表面麻酔
貼付(皮膚にリドカインテープ:静脈穿刺、皮膚小手術など)、塗布(口腔内、鼻腔内処置)、滴下(眼科手術)、噴霧、含嗽(口腔内処置、内視鏡検査)などの方法があります。
浸潤麻酔
組織内に直接、局所麻酔薬を注射・浸潤させる方法です。
外傷時の縫合、皮下・皮内の小腫瘤摘出、各種穿刺術などの際に用いられます。
キシロカインは作用時間が早く、組織浸潤性が高いです。
局所麻酔中毒
局所麻酔薬の大量投与や血管内注入では、局所麻酔中毒が生じることがあります。
初発症状は、めまい、ふるえ、頭痛、興奮など。重症では意識障害や全身けいれんを生じるため注意が必要です。
伝達麻酔
脊髄くも膜下麻酔と硬膜外麻酔について書いていきます。
どちらも背部から脊髄に向かい穿刺を行いますが、薬剤の注入部位の違いが重要です。
伝達麻酔・脊髄くも膜下麻酔(脊椎麻酔)
くも膜下腔に局所麻酔薬を注入します。脊髄より分岐する神経を麻酔する方法です。
腰椎で行われることが多く、腰椎麻酔ともいわれます。
虫垂炎や肛門周囲の手術、泌尿器系の手術など、下腹部、下肢の手術の麻酔として行われます。
穿刺部位
くも膜下腔は第2仙骨孔の高さで終わりますが、脊髄円錐は第2腰椎上縁で馬尾神経になります。
また、腰椎下部は椎間孔が広く、棘突起も水平に走るので、穿刺部位は下部腰椎とすることが多いです。
穿刺体位
通常は側臥位とし、頸部を曲げ膝を抱えて強く前屈させます。それにより棘突起の間隔をできるだけ広げます。
肛門部などの手術では座位で麻酔薬を注入し、仙髄部のみ麻酔します。
目標麻酔レベル
麻酔域が脊髄T4以上になると、呼吸抑制を生じる可能性があります。
麻酔域の確認にはピン刺激や氷片を用いて、温冷覚、触覚、痛覚の消失の範囲を確認します。
大量の麻酔薬のくも膜下腔への注入などにより、すべての脊髄神経と上位中枢が麻痺した状態を全脊髄くも膜下麻酔といいます。人工呼吸管理を行い、麻酔薬の効果消失を待ちます。
合併症 脊髄穿刺後頭痛
脳脊髄液が穿刺部より硬膜外へ漏れると、脳圧が下降し頭痛がおきます。
若年者に多く、術後に発症し1週間ほど続きます。
座ったり、立つと悪化します。
輸液や安静で回復しない場合、自家血を硬膜外に注入し血栓で穿刺部を閉鎖します。
伝達麻酔・硬膜外麻酔
硬膜外腔に局所麻酔を注入します。これにより脊髄神経を麻酔する方法です。
持続硬膜留置カテーテルにより、手術中の鎮痛のみでなく、術後数日間の鎮痛を得ることができます。
穿刺法
背部から穿刺します。脊椎棘突起の正中または傍正中より穿刺します。
仙骨裂孔より穿刺する仙骨麻酔も一種です。
脊髄くも膜下腔麻酔との比較
硬膜外腔の上方は後頭骨で明確に境界されているので、硬膜外腔に注入された麻酔薬が延髄に達することはありません。胸部手術でも応用可能です。
硬膜外麻酔で硬膜を誤って破ると脊髄くも膜下腔麻酔になり、薬液量が多いと全脊髄くも膜下腔麻酔となってしまいます。
留置カテーテルに夜持続硬膜外麻酔と合併症
術後数日間の鎮痛やがん性疼痛などの患者に対して、留置カテーテルを用いて持続的に疼痛制御ができます。
ただ、長期の留置はカテーテル感染のリスクがあるので注意が必要です。
伝達麻酔・神経ブロック
神経の途中あるいは神経根幹や神経叢に局所麻酔を注入し、末梢支配領域を遮断する方法です。
手術目的に用いられるブロック
鎖骨上窩腕神経叢ブロック、腋窩神経ブロック、手首ブロック、指ブロック、坐骨神経ブロック、大腿神経ブロック。
ペインクリニックに用いられるブロック
三叉神経ブロック、顔面神経ブロック、星状神経節ブロック、肩甲上神経ブロック、肋間神経ブロック、脊髄傍交感神経節ブロック、腰部交感神経節ブロック、腹腔神経叢ブロック
まとめ
局所麻酔は表面麻酔、浸潤麻酔、伝達麻酔。
脊椎麻酔 | 硬膜外麻酔 | |
手技 | 容易 | やや難しい |
注入部位 | くも膜下腔 | 硬膜外腔 |
麻酔範囲 | 確実 | 不確実 |
麻酔高調節 | 難しい | 容易 |
発現 | 速い(5分以内) | 遅い(5〜20分) |
持続時間 | 長い | 比較的短い |
注入薬液量 | 少量(1〜3ml程度) | 大量(初回5〜20ml) |
合併症 | ||
麻酔中毒 | 少ない | 起こりやすい |
血圧低下 | 高度・急速 | 軽度 |
呼吸抑制 | 多い | 軽度 |
全脊髄くも膜下腔麻酔 | まれ | 可能性大 |
悪心・嘔吐 | 多い | 少ない |
頭痛 | 多い | 少ない |