コホート研究と症例対照研究について、メリット、デメリットなどかんたんに説明します。
また、いろんな調査方法のエビデンスレベルもまとめておきました。どの調査が信頼できるかがわかります。
参考にしてみてください。
目次
まずは利点、欠点を比較!
まずは、コホート研究と症例対照研究の比較をします。
コホート研究の利点
・仮説の証明が容易
・バイアスが少ない
・罹患率、死亡率が得られる
・目的疾患以外にも観察する機会がある
症例対照研究の利点
・調査期間が短い
・調査費用が少ない
・調査対象が少なくてすむ
・稀な疾患も分析可能
続いてはそれぞれの欠点についてです。
コホート研究の欠点
・調査期間が長い
・調査費用がかかる
・稀な疾患では、調査対象が多数必要になる
・調査途中に脱落者が出ることがある
・診断基準や方式が途中で変わる恐れがある
症例対象研究の欠点
・仮説の証明が困難
・バイアスが入りやすい
・罹患率や死亡率が得られない
それでは、これらのことをふまえて、それぞれの研究がどういうものかをかんたんに説明します。
コホート研究とは
コホート研究は、要因曝露の有無別に疾患の発生状況を調べる方法です。
例えば、高脂肪食の人とそうでない人を追跡調査し、それぞれの病気の罹患や死亡率を調べます。それで、高脂肪食の人はそうでない人に比べ、ある病気のなりやすさ・死亡の危険が何倍になるかを計算するという感じです。
病気や生活習慣など、さまざまな要因で調べることができます。お酒を飲む人は、飲まない人に比べてどういう病気になるかといった感じですね。
相対危険度、寄与危険度を算定できる
・相対危険度
例えば、ある集団で健康な人を対象に食事習慣を調べ、10〜20年追跡します。
高脂肪食群の肥満の罹患率と、そうでない群の肥満の罹患率を調べます。
これにより、高脂肪食の群が何倍肥満を起きやすいかを計算します。
相対危険度=曝露群の疾患罹患(死亡)率/非曝露群の疾患罹患(死亡)率
・寄与危険度
曝露群の罹患(死亡)率から非曝露群の罹患(死亡)率を引いた値です。
これにより、危険因子の曝露によって罹患の危険がどれだけ増えたか、もしくは曝露を除くと曝露群の罹患率がどの程度減少するかを示します。よって、危険因子が集団に与える影響の大きさをあらわします。
危険危険度=曝露群の疾患罹患(死亡)率ー非曝露群の疾病罹患(死亡)率
症例対象研究とは
疾病の発生あるいは死亡した人を症例群とし、そうでない人を対照群として要因への曝露を比較します。
例えば、肥満の人を症例群、そうでない人を対照群として、それぞれどのような食習慣かを調べて比較します。
コホート研究と異なり、追跡しない
症例対象研究では、コホート研究と違い、集団を追跡観察しません。
そのため、調査費用や時間はかからないのですが、要因の曝露群と非曝露群の罹患率がわかりません。
しかし、疾病の罹患が低く、各群の標本が真に母集団を代表していればオッズ比を持って相対危険度とすることができます。
オッズ比・・・ある事象の起こりやすさを2つの群で比較して示す統計学的な尺度である。オッズ比が1とは、対象とする条件あるいは事象の起こりやすさが両群で同じということであり、1より大きい(小さい)とは、条件あるいは事象が第1群(第2群)でより起こりやすいということである。オッズ比は必ず0以上である。第1群(第2群)のオッズが0に近づけばオッズ比は0(∞)に近づく。
引用 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%83%E3%82%BA%E6%AF%94
肥満罹患 | 肥満なし | |
高脂肪食 | a(40人) | b(60人) |
非高脂肪食 | c(10人) | d(90人) |
例えばこの表のような状況だった場合、オッズ比は次のような計算をします。
オッズ比=(40×90)/(60×10)=6
疫学研究のエビデンスのレベル
疫学研究にはさまざまな方法があります。
その方法によって、エビデンス(証拠)レベルが異なります。
エビデンスレベルが高いということは信頼できるということです。
エビデンスレベルが高いものから順に書いていきます。
無作為化比較対照試験(介入研究)
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コホート研究
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症例対照研究
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記述疫学研究(横断研究、生態学的研究)
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症例報告など
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専門家の意見
まとめ
コホート研究は追跡する、エビエンスが高いが、調査期間が長く、費用がかかる。
症例対照研究は、調査期間が短く、費用も少なくて済むが、コホート研究よりはエビデンスが低い。
もっともエビデンスが高いのは、無作為化比較対照試験、低いのは専門家の意見。