腫瘍ってよく聞くけど何のことなの?
今回はこんな疑問を解決するためにかんたんにわかりやすく説明していきます。
参考にしてみてください。
目次
腫瘍とは
腫瘍とは、目的のない不必要な過剰な細胞増殖のことをいいます。
正常の細胞は一定の制御のもと、自然死と再生を繰り返し、身体の恒常性を保っています。
しかし、腫瘍はその一定の制御を受けず、自ら増殖していくのです。
このため「新生物」ともいわれています。
悪性腫瘍(がん)と良性腫瘍
悪性の腫瘍における腫瘍細胞は急速に増殖を続け、その生体を死に至らせてしまうわけですが、これがいわゆる癌(悪性新生物)というわけです。
一方、良性腫瘍は悪性腫瘍に比べて発育が緩慢で、浸潤や破壊をもたらさず生命予後は良好です。
しかし、一部の良性腫瘍は時に癌化することがあるので、前癌病変として注意が必要です。
良性腫瘍 | 悪性腫瘍 | |
腫瘍増殖 速度 形式 周囲との境界 壊死 |
遅い 膨張性 明瞭 乏しい |
速い 浸潤性 不明瞭 著しい |
生体への影響 転移 再発 悪液質 予後 |
起こさない 少ない なし 良好 |
起こす 多い 起こす 不良 |
腫瘍細胞 分化度 異型性 核分裂 |
高い 弱い 少ない |
低い 強い 多い |
腫瘍の分類
腫瘍は大きく上皮性と非上皮性に分けられ、さらにそれぞれ良性腫瘍と悪性腫瘍に分類されます。
悪性腫瘍全体を引っくるめて、ひらがなで「がん」と表現します。
さらに付け加えると、上皮性の悪性腫瘍を「癌(または癌種)」といい、非上皮性の悪性腫瘍を「肉腫」といいます。
つまり、
良性上皮性腫瘍
良性非上皮性腫瘍
悪性上皮性腫瘍(これが癌)
悪性非上皮性腫瘍(これが肉腫)
以上の4つに分類されるというわけです。それぞれかんたんに書いていきます。
良性上皮性腫瘍
乳頭腫と腺腫があります。
乳頭腫
乳頭腫は表皮や粘膜の細胞増殖によって盛り上がったように見えます。
いわゆるポリープです。
扁平上皮性、移行上皮性、円柱上皮性または立方上皮性があります。
腺腫
腺上皮から発生します。
前癌病変としての意義が大きいです。
管状腺腫、乳頭腺腫、絨毛腺腫、嚢胞腺腫などがあります。
腺組織や外分泌腺臓器、内分泌臓器に発生します。
特に消化管粘膜に発生しやすいとされ、大腸粘膜にできたものは大腸癌の前癌病変として切除されます。
また、嚢胞腺腫は卵巣と虫垂に発生しやすく、癌化の可能性が高いので注意が必要です。
良性非上皮性腫瘍
線維組織、脂肪組織、筋組織、骨などのような上皮性組織以外の組織にできます。
組織名に「腫」をつけて呼びます。
線維腫、脂肪腫、血管腫、平滑筋腫、横紋筋腫、骨腫、軟骨腫、神経線維腫などがあります。
悪性上皮性腫瘍(癌)
発生頻度が肉腫よりも多く、悪性腫瘍の代表とみなされています。
扁平上皮癌、腺癌、移行上皮癌(尿路上皮癌)に分けられます。
扁平上皮癌
皮膚や重層扁平上皮よりなる粘膜から発生する悪性腫瘍です。
口腔、舌、咽頭、食道などの重層扁平上皮の組織のほか、肺、胆嚢、膵管などに仮性により生じた重層扁平上皮が発生母地になることもあります。
子宮癌の大半は子宮頸部に発生する扁平上皮癌です。
癌細胞の中心部は皮膚角化層に一致し、癌真珠とよばれる角化した細胞の集まりが見られます。
腺癌
腺組織から発生する悪性腫瘍です。
円柱上皮や立方上皮が作る形状によって、乳頭状、管状、乳頭管状癌などとよばれます。
腺腔が著しく発達したものは嚢胞腺癌とよばれ、卵巣や膵臓に見られます。
甲状腺癌の多くは乳頭状癌ですが、甲状腺の濾胞に似た濾胞状腺癌もあります。
胃に多いものに印環細胞癌があります。個々の癌細胞が粘液を産生しています。
腸管や気管支粘膜の腺管の一部の内分泌細胞が腫瘍化したもののうち、悪性の経過をとるものをカルチノイドといいます。
移行上皮癌(尿路上皮癌)
膀胱、尿管、腎盂などの粘膜より発生し、乳頭状増殖を示します。
悪性非上皮性腫瘍(肉腫)
軟部組織や骨・軟骨などの非上皮性組織の悪性腫瘍です。
肉腫とよばれます。
また、造血器の悪性腫瘍である白血病や、リンパ組織の悪性腫瘍である悪性リンパ腫も含まれます。
組織名に「肉腫」がつけて呼びます。
線維肉腫、脂肪肉腫、血管肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫などがあります。
肉腫は癌に比べて、血行転移が圧倒的に多いです。
まとめ
腫瘍とは、細胞が勝手に過剰に増殖したもの
良性上皮性腫瘍は、乳頭腫と腺腫
良性非上皮性腫瘍は「〜腫」
悪性上皮性腫瘍は扁平上皮癌、腺癌、移行上皮癌(尿路上皮癌)
悪性非上皮性腫瘍は「〜肉腫」