今回はいわゆる頭部外傷についてかんたんに説明します。
参考にしてみてください。
目次
頭部外傷
頭部の外傷を大きく4つに分けます。
①頭蓋軟部損傷
②頭蓋骨骨折
③頭蓋内出血
④脳震盪
それぞれ説明していきます。
頭蓋軟部損傷
頭皮は非常に血管に富んでいるため、頭皮の裂傷では出血が多量になり、小さな傷でも頭部から顔面に広範な流血、凝血を認めることがあります。
いわゆる「たんこぶ」は皮下血腫です。
小児にみられるぶよぶよしたコブは帽状腱膜下血腫といい、骨膜と帽状腱膜との間の出血です。大量出血となり、年少例では、輸血を要することもあります。
頭蓋骨骨折
頭蓋骨は頭蓋冠、頭蓋底に分けられます。
線状骨折
頭蓋骨に線状のヒビが入った状態です。
中硬膜動脈や静脈洞を横切るものは硬膜外出血が発生することがあります。
陥没骨折
骨折片が頭蓋内に落ち込んで、ボコッと凹んだ状態の骨折です。
小児では骨が柔らかいので、陥没ではなく陥凹骨折(ピンポンボール骨折)を呈することがあります。
頭蓋底骨折
頭蓋底骨折についてはこちらに書いてあります。
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頭蓋内出血
急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、慢性硬膜下血腫、脳挫傷・外傷性脳内出血があります。
ちなみに硬膜というのは、脳を覆う膜のひとつです。
脳から順に、軟膜、クモ膜、硬膜という順番で、その上に頭蓋骨があります。
急性硬膜外血腫
多くは頭蓋骨骨折に伴って、硬膜動脈、静脈洞の損傷からの出血によって頭蓋骨と硬膜の間に生じます。
特に側頭骨骨折による中硬膜動脈の破綻によるものが多いです。
特徴として意識清明期があります。これは、受傷直後は一過性の意識障害を呈するがすぐに意識が回復するというものです。
しかし、血腫が増大していくと徐々に、または急速に意識が混濁します。
瞳孔不同、片麻痺などを起こすこともあります。
急性硬膜下血腫
硬膜下にある架橋静脈や静脈洞の破綻によって硬膜とクモ膜の間に血腫が生じます。
転落や事故などにより生じ、高齢者に多いです。
小児の場合、虐待による頭部外傷が原因のこともあります。
若年者ではスポーツ頭部外傷でみられます。
受傷後から意識障害を呈することが多いです。
急速に脳ヘルニアをきたすと、瞳孔不同、除脳硬直が出現します。
慢性硬膜下血腫
脳と硬膜をつなぐ架橋静脈の破綻によって起こります。
硬膜下に、髄液などと混ざった血性貯留液が徐々に皮膜を形成し、血腫として成長していきます。
通常、高齢者やアルコール多飲者に多いです。
軽微な外傷のあと(3週間以降)に、歩行障害や片麻痺、言語障害、見当識障害、認知症などで発症します。
脳挫傷・外傷性脳内出血
外力によって、脳が慣性の働きで頭蓋骨にぶつかることで発生します。
つまり、衝撃を受けた部位と反対側の脳表面にも傷害を受けることになります。
このような種々の外力が脳実質に加わることにより、脳損傷をきたして起こる脳実質の挫滅、小出血、持続する浮腫を脳挫傷といいます。
脳震盪
頭部の急激な衝撃による脳細胞の損傷で、一時的な神経症状を伴います。
脳震盪の症状には、意識消失、痙攣、記憶障害のほか、頭痛、めまい、注意力・集中力低下、光覚・聴覚過敏などさまざまなものがあります。
特にセカンドインパクトシンドロームに注意が必要です。セカンドインパクトシンドロームは、一度脳震盪をおこし、短期間の間に2回目の脳震盪を起こすと重篤な状態に陥ることです。
そのためコンタクトスポーツでは、頭部外傷に関するガイドラインが設けられています。例えば、当日の競技復帰不可、1週間の安静などといったものがあります。
頭部外傷の応急処置
頭部の切り傷は小さくても、出血が多量になることがあります。
この場合、清潔なガーゼやタオルで圧迫して止血しましょう。
頭への衝撃を受けた場合は、まず意識確認が重要です。
意識障害がある、激しい頭痛、嘔吐、異常運動などがある場合、脳を損傷していることが疑われます。その場合直ちに救急車を呼びましょう。
頭部外傷は、頚椎・頸髄の損傷を伴っている危険がある場合は、不用意に動かさないように注意が必要です。
上位の頸髄が損傷されてしまうと、呼吸ができなくなる場合があります。
まとめ
急性硬膜外血腫の意識清明期に注意。その後、意識混濁の可能性あり。
脳震盪ではセカンドインパクトシンドロームに注意。
意識がない、異常運動がある時は救急車を。頚椎・頸髄損傷を伴っていることがあるので不用意に動かさない。