今回は仙骨神経叢の話を書いていきます。
前回、腰神経叢について書きましたがそれの別バージョンみたいなものです。
腰神経叢では、腹部、太ももの前や内側の筋肉を支配する神経がありましたが、仙骨神経叢は大、中、小殿筋や、ハムスト、下腿の筋肉を支配しています。坐骨神経痛で有名な坐骨神経も仙骨神経叢の神経です。
それでは書いていきます。
目次
仙骨神経叢とは
仙骨神経叢はお尻周りの筋肉、ハムスト、下腿へつながる神経の総称です。前回も書きましたが、神経叢とは簡単いいえば神経が集まっているところです。
仙骨神経叢のほかに、腕神経叢、頸神経叢のようなものもあります。
L4〜S3の神経で構成される
仙骨神経叢は第4腰神経から第3仙骨神経の前枝で構成されています。
これらの神経は先ほどから書いているように、お尻周りの筋肉、ハムスト、下腿などの筋肉を支配しています。また、お尻の下方、もも裏、下腿外側、足部の感覚も支配しています。
仙骨神経叢から出るもの
仙骨神経叢からは以下の枝があります。カッコ内は構成する神経です。
上殿神経(L4〜S1)
上殿神経はL4〜S1から構成されます。
梨状筋上孔を通過し、中殿筋、小殿筋、大腿筋膜張筋を支配します。感覚領域はありません。
下殿神経(L5〜S2)
下殿神経はL5〜S2で構成されます。
梨状筋下孔を通過し、大殿筋を支配します。感覚領域はありません。
後大腿皮神経(S1〜S3)
後大腿皮神経はS1〜S3で構成されます。
梨状筋下孔を通過し、大殿筋の下から皮下に出てきます。もも裏からふくらはぎの上部にかけての感覚を支配しています。また、下殿皮神経という枝もあるため、お尻の下方の感覚も支配しています。
坐骨神経(L4〜S3)
座骨神経はL4〜S3から構成されます。仙骨神経叢を構成するすべての神経からできているということです。坐骨神経は末梢神経の中で最大かつ最長の神経です。
梨状筋下孔を出たあと、坐骨結節と大腿骨の大転子の中間を通り下方へ降りていき、大内転筋と大腿二頭筋の間を通過します。
坐骨神経は太ももの下方3分の1あたりから脛骨神経と総腓骨神経に分岐します。ハムストリングスを構成する筋肉のうち半腱様筋、半膜様筋、大腿二頭筋長頭は脛骨神経部の支配です。大内転筋は閉鎖神経と脛骨神経の二重支配を受けます。
大腿二頭筋の短頭は坐骨神経の総腓骨神経部に支配されます。
仙骨神経叢の筋枝が支配する筋肉
仙骨神経叢から直接支配を受ける筋肉があります。
梨状筋、内閉鎖筋、上双子筋、下双子筋、大腿方形筋です。
外旋6筋のなかの5つが該当します。残りの外閉鎖筋は閉鎖神経支配です。
坐骨神経(L4〜S3)の枝
坐骨神経は脛骨神経と総腓骨神経に分岐していきます。まずは脛骨神経について書いていきます。
脛骨神経
坐骨神経は大腿の下方3分の1あたりから2つに分岐します。そのうち内側のものが脛骨神経です。もうひとつがあとから書く総腓骨神経です。
脛骨神経はさらに内側腓腹皮神経を分岐しますが、残りの脛骨神経は筋肉へ枝を出しながら深部へ入っていきます。脛骨神経は下腿後面の筋肉の膝窩筋、足底筋、腓腹筋、ヒラメ筋、後脛骨筋、長母指屈筋、長指屈筋を支配します。
内側腓腹皮神経
脛骨神経は内側腓腹皮神経を分岐します。
内側腓腹皮神経は、総腓骨神経から分岐した外側腓腹皮神経とともに腓腹神経になります。腓腹神経はアキレス腱外側へ下行し外側踵骨枝を分岐します。
内側足底神経、外側足底神経
もう一方の筋肉へ枝を出しながら深部へ入った脛骨神経は、内くるぶし(内果)後方付近で内側踵骨枝を分岐し、かかとの内面の感覚を支配します。
その後、内果後方を前外側へ曲がり、内側足底神経と外側足底神経に分岐します。
内側足底神経は足の母指外転筋、短母指屈筋、短指屈筋、第2虫様筋を支配します。
外側足底神経は、足底方形筋、小趾外転筋、短小趾屈筋、小趾対立筋、底側骨間筋、背側骨間筋、第3、4、5虫様筋、母趾内転筋を支配します。
外側足底神経は浅枝と深枝に分かれます。
浅枝は内側足底神経とともに総底側趾神経になります。総底側趾神経は固有底側趾神経になります。
総腓骨神経
坐骨神経から分岐した総腓骨神経について書いていきます。総腓骨神経はさらに浅腓骨神経と深腓骨神経に分かれます。
浅腓骨神経
坐骨神経から分岐した総腓骨神経は腓骨頸部の後面から前方へ出てくるところで浅腓骨神経と深腓骨神経に分岐します。
浅腓骨神経は、長腓骨筋、短腓骨筋を支配します。
浅腓骨神経は長腓骨筋の起始部を貫いて外側筋区画を走行します。
浅腓骨神経はさらに内側足背皮神経と中間足背皮神経に分かれます。
深腓骨神経
腓骨頸部から前方に出てきたところで、浅腓骨神経と深腓骨神経が分岐します。
深腓骨神経は長腓骨筋、前下腿筋間中隔、長指伸筋まで貫き前方筋区画を走行します。
深腓骨神経は前脛骨筋、長母趾伸筋、長趾伸筋、第3腓骨筋を支配します。
上伸筋支帯を通過した後、内側枝と外側枝に分岐します。
内側枝は第1、2趾の一部の感覚を支配し、外側枝が短母趾伸筋、短趾伸筋を支配します。
絞扼性神経障害
仙骨神経叢の中でも多い絞扼性神経障害は以下のものがあります。
梨状筋症候群
坐骨神経は梨状筋のすぐ下を走行します。
梨状筋症候群は坐骨神経(L5〜S3)が梨状筋部を通過するときの絞扼、オーバーユーズなどが要因でしびれや痛みがあります。
神経の走行に沿ってお尻から大腿後面、または下腿にかけての痛み、しびれの症状や、長時間座っているのが困難なことがあります。
総腓骨神経の絞扼性神経障害
総腓骨神経の絞扼性神経障害は腓骨頭付近での発生がほとんどです。
症状は下腿外側から足背にかけての痛みやしびれがあります。
足根管症候群
内くるぶし(内果)の後方にある足根管というトンネルで脛骨神経が絞扼されることで発生します。
症状は足底部や足根管部の痛みやしびれがあります。ジョガーズフット(joggers foot)といわれるものもこの症候群の一部です。
回内足傾向が強いと内側足底神経が緊張して、足の舟状骨や内くるぶし(内果)の周辺に症状が出ることがあります。
まとめ
仙骨神経叢はL4〜S3
上殿神経(L4〜S2)、下殿神経(L5〜S3)、後大腿皮神経(S1〜S3)、坐骨神経(L4〜S3)
坐骨神経からは脛骨神経、総腓骨神経が分岐していく。脛骨神経は内側足底神経と外側足底神経に分岐し、総腓骨神経は浅腓骨神経と深腓骨神経に分岐する。