装具は四肢や体幹の機能障害の軽減を目的として使用する補助装具です。
装具を使用する目的は以下のようなものがあります。
①変形の防止
②変形の矯正
③局所の固定、支持、免荷
④機能の使用、補助
今回は装具について、どのようなものがどの疾患に適応なのかかんたんに紹介します。
参考にしてみてください。
上肢の装具
上肢装具の目的
麻痺筋の代用、筋力低下した筋や関節運動の補助、肢位保持や固定・矯正、肢位保持のための牽引、運動のコントロールなどがあります。
肩外転装具
適応疾患:腱板損傷、肩関節部骨折、肩関節固定術後など
肩甲骨保持装具
適応疾患:前鋸筋麻痺、三角筋拘縮など
肩亜脱臼防止用装具
適応疾患:習慣性肩関節脱臼の整復後
腕つり
適応疾患:脳卒中による片麻痺、三角筋麻痺など
運動補助装具
肩関節の運動麻痺があるが、末梢の上肢機能が残っている時に使います。BFO、PSB、機能的上肢装具、電動腕装具などです。
適応疾患:腕神経叢麻痺、三角筋麻痺、頚髄不全損傷など
静的肘装具
変形予防、矯正、機能肢位の保持固定に用います。肘継手はありません。
動的肘装具
適応疾患:肘関節拘縮、腕神経叢麻痺などによる筋力低下、骨折、脱臼、シャルコー関節による関節不安定症など
手背屈装具
手関節を背屈位に保持します。
適応疾患:橈骨神経麻痺の初期
トーマス型懸垂装具
母指の外転・伸展、MP関節伸展位を補助します。
適応疾患:橈骨神経麻痺の初期・回復期
オッペンハイマー型装具
手背屈装具です。
適応疾患:橈骨神経麻痺(回復遅延)、フォルクマン拘縮
長対立装具
適応疾患:頸髄損傷、正中神経麻痺(高位)
短対立装具
適応疾患:正中神経麻痺(低位)
把持装具
適応疾患:頸髄損傷(C6、7、8)
ナックルベンダー
MP屈曲補助装具です。
適応疾患:MP過伸展、伸展拘縮の矯正、脳性麻痺、熱傷瘢痕
逆ナックルベンダー
MP伸展補助装具です。
適応疾患:MP屈曲拘縮の矯正、脳卒中片麻痺、脳外傷後遺症
多目的装具
適応疾患:リウマチ変形に対する保護、機能補助
指用ナックルベンダー、逆ナックルベンダー
適応疾患:PIP関節拘縮
下肢の装具
下肢装具の目的として、体重支持、変形の予防、変形の矯正、関節運動コントロールがあります。
下肢装具の固定は3点固定が基本です。
また、適切な圧分布、除圧、除痛対策なども重要です。
長下肢装具 KAFO、LLB
適応疾患:大腿四頭筋の筋力低下、反張膝、内・外反膝など
短下肢装具 FAO、SLB
腓骨神経麻痺、尖足位拘縮など足関節の背屈力低下したものはクレンザック継手や後方制動継手。
足関節屈曲力低下では逆クレンザック継手や前方制動継手。
内・外反の矯正や保持にYストラップやTストラップ。
軽度の片麻痺、下垂足ではプラスチック式FAO。
整形外科手術後、足部変形、末梢循環障害では膝蓋靭帯で体重を支えるPTB装具。
膝装具
反張膝にはスェーデン式膝装具。
脳卒中片麻痺による反張膝+足底屈筋痙性対策には反張膝防止装具。
股装具
適応疾患:脳性麻痺の内転、内旋歩行、ペルテス病、先天性股関節脱臼など
靴型装具
内反変形・外反膝は外側シャンクフィーラー
外反変形・内反膝は内側シャンクフィーラー
凹足、関節リウマチ、中足骨頭痛は中足骨頭バー
距腿関節、距骨下関節障害はSACH足、キールヒール
左右脚長差は補高靴
足装具
俗に言う足底板です。シェーファー型アーチサポート、UCBL靴内挿板があります。
体幹の装具
体幹装具の目的は、変形の防止、変形の矯正、体重の支持、不随意運動の抑制固定です。
体幹装具も3点固定の原則に基づきます。
頚椎カラー
頚椎の安静を保つ程度で、運動制限機能はありません。
適応疾患:頚椎捻挫など
フィラデルフィアカラー
適応疾患:頚椎手術後、環軸関節軽度亜脱臼など
モールド装具
採型して作るので装着感が優れています。
適応疾患:頸部神経根症、軽度の頚髄症の保存療法
金属支柱付き装具
SOMI装具が該当します。下顎と後頭部のパッドと胸部・肩部の装具を支柱で連結させて頭部を保持、固定します。
適応疾患:頚椎手術後、頚椎圧迫骨折
ハローベスト
もっとも固定力があります。
体幹ベストと頭蓋骨に直達固定された装具を支柱ピンで連結します。
適応疾患:頚椎骨折、脱臼の術前術後
骨盤ベルト
適応疾患:仙腸関節捻挫、股関節症
仙腸関節装具
適応疾患:仙腸関節捻挫、2次性変形性股関節症
腰部コルセット(ダーメンコルセット)
もっとも使用されているものです。
適応疾患:腰痛
短硬性装具
①ナイト型装具:腰痛
②ウィリアムズ型装具:腰椎分離症、脊柱管狭窄症
長硬性装具
①テイラー型:胸腰椎圧迫骨折
②スタインドラー型:脊椎カリエス
3点固定過伸展装具(ジュウェット型)
適応疾患:胸椎圧迫骨折
ハロー骨盤装具
適応疾患:麻痺性側湾症など
補足 脊柱側彎症装具
側彎症は10代の女子に多いとされています。
ミルウォーキーブレース
側彎症の進行を止めるのにもっとも合理的ですが、装具を思春期の女子に装着させることが困難。治療途中のドロップアウトが30%ほどです。
まとめ
装具の目的
①変形の防止
②変形の矯正
③局所の固定、支持、免荷
④機能の使用、補助