充血とうっ血の違いをかんたんに説明します。
どちらも組織や臓器に流れる血液の量が過剰になった状態ですが、厳密には別のものなのです。
参考にしてみてください。
目次
充血とは
充血は、患部に動脈血が多量に入った場合に使います。
充血の原因
物理的刺激
温熱、寒冷、紫外線、機械的影響(擦過、打撲)などがあります。
化学的刺激
酸、塩基、アルコールなどがあります。
生物学的刺激
細菌など病原体の感染における毒素の作用などがあります。
充血の病態
充血は動脈血が過剰の状態です。
充血では、局所の動脈は拡張し、動脈血が過剰に流入しています。
肉眼的に組織や臓器は腫脹、発赤し、温度が上がり熱感があります。
単純な動脈性充血では一時的なもので、変化の後に元に戻ります。
障害が長い場合、水腫、出血を起こします。
急性炎症の時にしばしば見られ、炎症性充血とも呼ばれます。
通常、浮腫や炎症細胞滲出を伴いますが、炎症がおさまると充血も消退します。
うっ血とは
うっ血は、患部に静脈血が多量に入った場合に使います。
静脈血の還流が障害されて、静脈血が組織や臓器にうっ滞した状態です。
うっ血の原因
静脈血が心臓に戻りにくい、また静脈の障害によって局所の血液が還流できない場合に発生します。
心臓への還流が妨げられると、全身臓器にうっ血が生じます。
肺から左心房への還流が妨げられると、肺うっ血が生じます。この肺うっ血が高度になると、右心に波及し、全身の臓器にうっ血が進展することがあります。これをうっ血性心不全といいます。
各臓器のうっ血
肝うっ血
肝臓は全身うっ血での代表的臓器です。
肝うっ血では、肝臓は腫大し暗赤色を呈します。
うっ血は肝小葉中心体に強く、肝細胞を圧迫萎縮させてしまいます。
肝割面では小葉中心が暗赤色、周辺部が黄色を呈し、この状態をニクズク(果物の名前)肝とも呼ばれます。
肺うっ血
僧帽弁狭窄症など、左心不全が原因で起こる肺うっ血では、漏出性肺胞内出血を伴います。
これにより赤血球由来のヘモジデリン(血色素)を貪食した心不全細胞が肺胞内に多数見られます。
肉眼的には、肺は褐色に硬化します。
下肢のうっ血
下大静脈が圧迫されると、表在の静脈をバイパスとして還流し、その結果静脈瘤を示すことがあります。
着圧ストッキングをはいたり、下肢を挙上したりして対策しましょう。
門脈圧亢進
門脈とは、腹腔の臓器からの静脈血を集めて肝臓に運ぶ静脈の名前です。
この門脈の血行路に狭窄や閉塞が生じ、門脈圧が異常に高くなった状態を総称して門脈圧亢進といいます。
特に肝内の静脈の閉塞をきたす肝硬変は代表的な疾患です。
門脈を通れなくなった血液は、バイパスである腹壁の静脈を通って心臓へ還流しようとします。すると、お腹に静脈が浮き出てきます。これを「メデューサの頭」といいます。
腹壁の静脈ではなく、食道の静脈をバイパスとするときは、食道静脈瘤を呈します。硬い食べ物などで破裂すると大出血を起こします。
門脈を構成する血管のひとつである脾静脈の圧が亢進すると、脾臓が慢性のうっ血状態になり、脾腫を呈します。脾腫では赤血球の破壊が亢進し貧血になります。
肝硬変により血漿タンパク質が作れなくなる(低アルブミン血症など)と腹水を生じます。
まとめ
動脈血が過剰な状態が充血。
静脈血が過剰の状態がうっ血。
うっ血が臓器で起こるとさまざまな症状を呈する。