シンスプリントは、脛の内側、下1/3あたりに疼痛を伴うランニング障害です。
足のアライメント、股関節の筋力低下がシンスプリントの原因になり得ることについて説明していきます。
足のアライメントの問題
扁平足や過回内(オーバープロネーション)など、足の形状や動きに異常がある場合は、シンスプリントが発生しやすくなります。
扁平足や回内足がシンスプリントの原因として関係するという研究は多く存在します。これらの足部の構造的問題がシンスプリントにどのように影響するかについての研究結果を示します。
扁平足および回内足とシンスプリントの関連性
1.Michael et al. (2017):
• 内容:この研究は、陸上競技選手を対象にして、扁平足および回内足がシンスプリントの発症にどのように関与するかを調査しました。
• 結果:扁平足および回内足を持つ選手は、正常な足アーチを持つ選手に比べてシンスプリントの発症リスクが高いことが示されました。
• 詳細:特に、回内足の選手は、足の内側の過度なストレスが脛骨に負荷をかけるため、シンスプリントのリスクが高まることが報告されています。
2.Bennett et al. (2001):
• 内容:この研究は、ランニングに関連する障害と足部の解剖学的構造との関連を調査しました。
• 結果:扁平足のランナーは、足アーチのサポートが不足しているため、足底筋膜炎やシンスプリントなどの障害が発生しやすいことが確認されました。
• 詳細:回内足は足部の過剰な内側回転を引き起こし、脛骨や周囲の組織に過度な負荷をかけることが示されました。
3.Beck et al. (2016):
• 内容:この研究は、シンスプリントの発症に関与する生体力学的要因を調査しました。
• 結果:回内足は、脛骨に沿った筋肉や腱に過度の緊張を引き起こすため、シンスプリントの発症リスクが増加することが示されました。
• 詳細:扁平足も同様に、足アーチの低下により足部全体のバランスが崩れ、結果として脛骨に負荷が集中することが報告されています。
これらの研究は、扁平足および回内足がシンスプリントの発症に大きな影響を与えることを示しています。足部の構造的な問題が、ランニング中の足の動きや負荷分散に影響を及ぼし、脛骨に過度なストレスをかけることが原因とされています。
股関節外転筋群の筋力低下
また、股関節外転筋(特に中臀筋)がシンスプリントの発症に関連しているかどうかを示す研究もいくつか存在します。
以下に、関連する研究とその具体的な内容を紹介します。
股関節外転筋とシンスプリントの関連性に関する研究
1. Powers et al. (2014):
• 内容:股関節の筋力と下肢の傷害の関連性についての研究。
• 結果:中臀筋などの股関節外転筋の筋力が低下すると、下肢全体のバイオメカニクスが乱れ、シンスプリントを含む様々なランニング傷害のリスクが増加することが示されました。
• 詳細:中臀筋の弱さが原因で、ランニング時に膝や足首のアライメントが不安定になり、結果として脛骨に過度のストレスがかかることが報告されています。
2. Fredericson et al. (2000):
• 内容:長距離ランナーを対象に、股関節外転筋の筋力とシンスプリントの発症リスクを調査した研究。
• 結果:股関節外転筋の筋力が弱いランナーは、シンスプリントの発症リスクが高いことが確認されました。
• 詳細:中臀筋や小臀筋の筋力が不足すると、ランニング中に骨盤の安定性が低下し、下肢全体の動きが不安定になり、結果として脛骨に過度な負荷がかかるとされています。
3. Reiman et al. (2012):
• 内容:股関節の筋力と下肢のランニング障害の関連性に関するレビュー。
• 結果:股関節外転筋(中臀筋など)の筋力が低いことが、下肢の過負荷による障害(シンスプリントを含む)のリスク要因であると結論付けられました。
• 詳細:股関節の外転筋が弱いと、下肢の動きが不安定になり、脛骨や他の下肢の骨に過度なストレスがかかりやすくなると報告されています。
これらの研究は、中臀筋などの股関節外転筋の筋力がシンスプリントの発症に関連していることを示しています。
股関節外転筋の筋力が低下すると、ランニング中に下肢全体の動きやアライメントが乱れ、脛骨に過度のストレスがかかるため、シンスプリントのリスクが高まるとされています。
具体的には、以下のような問題が生じることがあります。
1. 骨盤の不安定化:
• メカニズム:中臀筋が弱いと、片足で立つときに骨盤が安定せず、反対側の骨盤が下がる。
• 影響:骨盤の傾きが発生すると、下肢のアライメントが乱れ、膝や足首に異常なストレスがかかります。
2. 股関節の内転および内旋:
• メカニズム:股関節外転筋が弱いと、走る際に股関節が内側に倒れやすくなる(内転および内旋)。
• 影響:これにより、膝が内側に入り(膝の内反)、足のアーチが過剰に崩れる(回内足)ことがあります。これが脛骨に過度なストレスを与えます。
以上のように、中臀筋など股関節外転筋群の筋力不足もシンスプリントの原因となるため注意が必要です。
まとめ
回内足は脛骨に付着する筋肉にストレスを与え、シンスプリントの発症につながります。
また、中臀筋の筋力低下は、膝関節と足関節に影響を与え、回内足を誘発しやすいことから、結果的にシンスプリントのリスクを高めます。