脊髄損傷の病態や評価法などについてかんたんに説明します。
参考にしてみてください。
目次
脊髄損傷の概念
脊髄損傷とは、外傷や炎症、腫瘍によって脊髄が損傷を受けたものです。
頸髄損傷では四肢麻痺、胸・腰髄損傷では対麻痺になります。
これらの障害は、軽度の損傷の場合を除いて生涯後遺症として残ります。
また、単に「手が動かなくなる、足が動かなくなる」だけでなく、合併症も伴います。そのため、急性期だけでなく慢性期にかけても全身管理が必要になることがあります。
しかし、現在では合併症の管理の進歩によって、社会復帰し、就労も可能になっているケースも多くなっています。
脊髄損傷の症状
運動・感覚麻痺
脊髄が損傷を受けると、損傷部位以下の運動麻痺、感覚麻痺をおこします。
さらに膀胱直腸障害も同時に出現します。
腫瘍などによって徐々に進行する場合は、筋力低下や感覚麻痺の症状も徐々に、または部分的に出現してきます。
脊髄ショック
外傷などによって急激に横断性に脊髄が損傷を受けると、受傷直後から損傷部位以下のすべての反射が消失します。これを脊髄ショックといいます。
脊髄ショックは2〜6週間ほど続きます。その後、徐々に自律神経反射や運動反射が出現します。
通常、最初に肛門反射や球海綿体反射、バビンスキー反射が出現します。
痙性麻痺
脊髄ショック期を経て、多くは痙性麻痺になります。
脊髄損傷の損傷部位の評価法
脊髄損傷は、損傷された部位によって、機能予後が決まります。
筋力テストや知覚テストなど神経学的な検査で損傷部位を決定します。
損傷部位を表す場合は、機能が残っている最下髄節をもって表現します。
例えば、C5の機能が残っているけど、C6以下の機能が障害されている場合は、「C5の脊髄損傷」という感じになります。
損傷部位と機能予後の関係
「標準リハビリテーション医学・1986改変」を参考に損傷部位と機能予後について書いていきます。
この内容は、文献によって若干の違いがある場合もあります。
C5損傷
上腕二頭筋、三角筋まで使えます。
可能な運動:肩関節屈曲、伸展、外転、肘関節屈曲
ADL:自助具を用いて食事可能
移動能力:電動車イス
C6損傷
大胸筋、橈側手根伸筋まで使えます。
可能な運動:肩関節内転、手関節背屈
ADL:寝返り可能、更衣一部可能
移動能力:車イス駆動可能
C7損傷
上腕三頭筋、橈側手根屈筋まで使えます。
可能な運動:肘関節伸展(プッシュアップ)、手関節屈曲
ADL:座位、起き上がり可能、車イスにてADLの多くが可能
移動能力:移乗可能、車イス駆動可能、改造した自動車運転可能
C8〜T1損傷
手指の屈筋、手内筋まで使えます。
可能な運動:指関節屈曲
ADL:車イスにてほぼ自立
移動能力:改造した自動車運転可能
T6損傷
上位肋間筋、上位背筋が使えます。
可能な運動:体幹バランスが不安定
ADL:介助は不要
移動能力:車イス必要
T12損傷
腹筋が使えます。
可能な運動:体幹バランスが不安定
ADL:介助は不要
移動能力:車イス必要、LLB(長下肢装具)、松葉杖で歩行可能
L4損傷
大腿四頭筋が使えます。
可能な運動:膝関節伸展
ADL:介助は不要
移動能力:必ずしも車イスは必要でない。SLB(短下肢装具)で歩行可能
まとめ
脊髄損傷とは、外傷や炎症、腫瘍によって脊髄が損傷を受けたもの。
脊髄が損傷を受けと、損傷部位以下の運動麻痺、感覚麻痺をおこす。
現在では合併症の管理の進歩によって、社会復帰し、就労も可能になっているケースも多い。
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