今回は腸閉塞と大腸癌についてかんたんに説明していきます。
腸閉塞はイレウスともいいますね。
腸閉塞(イレウス)
概説
腸内容通過障害の状態のことをいいます。
機械的イレウスと機能的(麻痺性)イレウスに分けられます。
機械的イレウスはさらに血行障害のない単純性イレウスと、血行障害を伴う複雑性イレウスに分けられます。
原因
機械的イレウスの原因は腹部の手術後の癒着、大腸癌、腸重積が多いです。
機能的イレウスでは腹腔内臓器の炎症や全身性疾患、腹部手術、脊髄障害によって腸の蠕動運動が低下して起こります。
発生のほとんどが機械的イレウスです。
症状
排便排ガスの停止、腹部膨満感、腹痛、嘔吐がみられます。
複雑性イレウスでは突然の激しい腹痛で発症し、ショック状態になることもあります。
診断
聴診で腸雑音の異常亢進(機械的イレウスのとき)または低下(機能的イレウスのとき)が認められます。
腹部レントゲンで小腸内ガスがみられ、鏡面像も確認できます。
治療
絶飲食にします。機械的イレウスでは腸管内に唾液や胃液などの水分が流入するので、イレウス菅を挿入して腸内容を排除します。
飲み物も飲めないので、血管内が脱水症状になるのを防ぐため十分な輸液をおこないます。
予後
腹部の手術後の癒着、大腸癌、腸重積など発生原因によって異なります。
大腸癌
概説
大腸粘膜より発生した悪性腫瘍です。
大部分は腺癌です。男性では悪性腫瘍の死因第3位、女性では第1位です。
原因
高脂肪食、低線維食との関連が知られています。
癌遺伝子の関与も示唆されています。
大腸ポリープのうち、過形成ポリープの癌化はまれですが、腺腫性ポリープは癌化しやすいです。
家族性大腸腺腫症(優性遺伝性消化管ポリポーシス)やポイツ・ジェガース症候群では、大腸に多数の腺腫性ポリープが発生し、癌化が多いです。
症状
初期は無症状です。
右側(上行結腸)で発生した場合は進行するまで症状が出にくいです。
左側(下行結腸)で発生した場合は便秘が多くなります。
微量の持続出血による鉄欠乏性貧血で気づくこともあります。
進行すると腹部膨満感、腹痛、便の細小化、腸閉塞がみられます。
診断
腹部症状がある場合は大腸内視鏡検査、下部消化管バリウム造影検査をおこないます。
粘膜下層に止まっているものを転移の有無に関わらず早期癌とします。
腫瘍マーカーとしてCEAがあります。
治療
早期癌は内視鏡下で切除術をおこないます。
進行癌は外科的切除術をおこないます。
直腸下部など場所によっては人工肛門を増設します。
肝臓や肺に転移がある場合は原則的にそれらを含めて切除します。
手術不能なものは抗癌薬による全身化学療法をおこないますが有効例は少ないです。
予後
進行度によります。5年生存率は結腸癌で60〜70%ほどです。
まとめ
腸閉塞は手術後の癒着、大腸癌、腸重積などで起こることがある
大腸癌は高脂肪食、低線維食との関連がある
右側にできたものは症状が出にくい、左側は便秘気味になる