腫瘍が発生する仕組みや、早期癌や末期癌、さらに癌の転移についてかんたんにまとめていきます。
参考にしてみてください。
目次
腫瘍の発生
発癌は正常細胞が発癌因子によって異なった細胞になることから始まります。
その後、癌になるまでいくつかの段階を経ていきますが、その段階ごとにイニシエーション、プロモーション、プログレッションの3段階で説明できます。
イニシエーション
細胞は、発癌因子によって遺伝子に変化を受けます。
変化を受けた細胞は、何度か細胞分裂を繰り返し、不死化細胞・変異細胞として固定してしまいます。
プロモーション
不死化した細胞は、癌化を促進する因子(プロモーター)の影響により前癌病変・良性腫瘍を経て、あるいは直接に癌細胞へ進展します。
前癌病変とは、正常の組織に比べて癌発生の危険性が高い病変の総称です。
大腸腺腫や食道、子宮頸部の重層扁平上皮の異形成は癌が発生しやすいものです。
また、肺・気管支の扁平上皮化生粘膜からの扁平上皮癌、胃粘膜の腸上皮化生からの高分化腺癌が発生します。
プログレッション
癌細胞がさらに増殖し、臨床的に把握できる癌へ進行していきます。
浸潤や転移する能力を得て、より悪性度の高い悪性腫瘍となっていく段階をプログレッションといいます。
腫瘍の増殖と進展
腫瘍の進展の指標を判断する病期分類にTNM分類というものがあります。
TNM分類
Tは原発腫瘍の大きさ、Nは所属リンパ節への転移の有無、Mは遠隔臓器への転移の有無を示します。
3要因を組み合わせて病期をⅠ期、Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳ期と定めます。
これを元に早期癌、不顕生癌、進行癌、末期癌などに分けることができます。
早期癌とは
治療によりかなり高率に完全治療が望める程度までしか発育してない癌です。
TNM分類のⅠ期に相当します。
臓器によっては、早期癌は明確に定義されているものがあります。
胃癌、大腸癌では癌の浸潤が粘膜下層までにとどまるものが早期癌とされています。
不顕生癌とは
臨床的に把握できない、またはできなかった癌のことです。
オカルト癌、偶発癌、ラテント癌に分けることができます。
オカルト癌
全身の症状や転移の存在から、癌の存在は指摘できるのに原発巣が不明だったものが、経過中や亡くなった後に原発巣が明らかになったものをいいます。
偶発癌
癌以外の病変の手術を行ったら、切除標本内に偶然に癌を見つけたものをいいます。
前立腺癌や甲状腺癌でその頻度が高いです。
ラテント癌
病理解剖ではじめて明らかになった癌のことをいいます。
病理解剖とは、疾病で亡くなった人の疾病の本態解明のために行う解剖のことです。
進行癌・末期癌
早期癌の時期を超えてしまい、治療による完全治癒が期待できない癌をいいます。
胃がんや大腸癌では、固有筋層や漿膜、それ以上に癌浸潤が及んだものが進行癌です。
進行癌では、原発巣の大きさが増大し、周囲組織へ浸潤して破壊をもたらし、転移も見られるようになります。
末期癌は、もっと癌が進行して、患者の生命活動が終わる間近に迫った癌のことをいいます。
癌の転移
癌は原発巣から、ほかの部位や臓器へと進展します。これを転移といいます。
転移は血行性、リンパ行性、播種の3種類があります。
血行性転移
毛細血管や静脈といった壁の弱い血管へ浸潤し、血流を介して全身へ散布され、ほかの臓器へ転移し増殖します。
以下のものが有名です。
胃癌や大腸癌からは肝臓
肝癌、甲状腺癌からは肺
肺癌からは脳
前立腺癌からは骨
リンパ行性転移
組織内リンパ管へ浸潤した細胞癌はリンパ管に沿ってリンパ節へ転移します。その後、さらに次のリンパ節へ転移します。
胃癌などの腹腔や胸腔のが左頸部鎖骨下リンパ節に転移し腫大したものはウィルヒョウのリンパ節といいます。
播種
肺癌や胃癌などが、肺胸膜や胃の漿膜に達し、そこから胸腔や腹腔内に散布され随所で増殖し、多数の転移性腫瘍を形成するもです。
胃癌など上腹部の癌が両側卵巣に転移したものを、クルーケンベルグ腫瘍といいます。
直腸子宮窩(ダグラス窩)または膀胱直腸窩に播種が生じたものをシュニッツラー転移といいます。
まとめ
癌になるまでいくつかの段階として、イニシエーション、プロモーション、プログレッションの3段階がある。
腫瘍の進展の指標を判断する病期分類にTNM分類があり、これを元に早期癌、不顕生癌、進行癌、末期癌などに分ける。
癌は原発巣から、ほかの部位や臓器へと進展します。これを転移といい、血行性、リンパ行性、播種の3種類がある。