今回は腫瘍細胞の特徴や腫瘍マーカーなどについて書いていきます。
ぜひ参考にしてみてください。
目次
腫瘍細胞の形態
腫瘍は正常細胞が腫瘍化し、1個の腫瘍細胞が増殖を繰り返したものです。
なので腫瘍は発生母地となった元の正常な細胞に似ています。
ですが、その増殖過程において母地と異なった形態や機能を示すようにもなります。
異型性
正常な細胞・組織と異なった形態的な異常を異型性といいます。
良性の腫瘍では、異型性が少なく正常細胞に類似します。
悪性腫瘍は異型性が強く、核や細胞の大小不同や多形性も見られます。
異型性の種類には以下のものがあります。
・細胞や核の大小不同
・核が細胞質の中で占める割合の増加(N/C比の増大)
・DNA増加による核の濃染(過染性)
・核小体の顕著化と増加
・多数の核分裂像や異常な分裂像
・極性の消失 などなど
細胞骨格
細胞質内には細胞の形態を保持し、運動性を発揮する細胞骨格があります。
その一つに中間径フィラメントとよばれる蛋白があります。
腫瘍細胞の原因を知る手がかり
腫瘍細胞が高度の異型性をしていて発生母地の細胞を推定できない時は、この中間系フィラメントを免疫染色することで腫瘍細胞の由来が明らかになります。
以下のようなものがあります。
・デスミン(筋細胞)
・ビメンチン(非上皮細胞)
・サイトケラチン(上皮細胞)
・GFAP(脳膠組織、脳グリア組織) などなど
腫瘍マーカーについて
生体内に腫瘍の発生や存在を示唆するものが腫瘍マーカーです。
腫瘍細胞は特異的な物質を産生しています。
つまり、それを証明できれば腫瘍の診断の手がかりになります。
以下のようなものがあります。
癌胎児性抗原(CEA)
CEAは大腸癌、胃癌、肺癌、乳癌、肝癌、膵癌などで証明されます。
もともとは胎児の消化管などの細胞に存在し、正常な細胞では存在しないものですが、腫瘍細胞ではこれが出現してきてしまいます。
α-フェトプロテイン(AFP)
肝癌などで証明されます。診断的価値が高いです。
CA19-9
膵癌、胆嚢・胆管癌で証明されます。
PSA
前立腺癌で出現します。
前立腺肥大症でも出現し、10ng/ml以上で癌の可能性が高まります。
hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)
絨毛癌で証明されます。
正常妊娠でも高値になります。
腫瘍の形態
腫瘍細胞については以上で、これからは腫瘍が肉眼的にどのように見えるのかを書いていきます。
腫瘍の色調
腫瘍は一般的には白〜灰白色です。これは、腫瘍では血管が少ないためそう見えます。
しかし、腫瘍細胞の特徴によって特有の色を示すものもあります。
悪性黒色腫はメラニン色素を産生するので黒色です。
副腎髄質腫瘍はクロム親和性細胞腫で、クロム酸塩につけると褐色になることから褐色細胞腫といわれます。
腎癌は脂質を含むので黄褐色〜黄灰色になります。
脂肪腫は脂肪そのもので黄色です。
腫瘍の固さ
腫瘍の固さは腫瘍細胞と結合組織量の比によって決まります。
結合組織の中でも膠原線維が多いと硬くなり、硬癌(スキルス)とよばれます。
結合組織が少なく柔らかいものは髄様癌とよばれます。
まとめ
腫瘍細胞には特徴的な所見がある
腫瘍細胞は細胞骨格、腫瘍マーカーなどを調べると診断の手がかりになる
腫瘍は種類によって色や固さが異なる