今回は、骨折がどれくらいでくっつくのか、どのようにして治るのかを簡単に説明します。
参考にしてみてください。
骨折の癒合日数
骨折した部位によって、骨癒合の期間は異なります。
部位だけでなく、患者の年齢、栄養状態、全身状態、治療法なども影響します。
ただ、骨癒合日数にはある程度の目安があるので、それに沿って説明します。
グルトの骨癒合日数
骨折の癒合期間の目安となるものにグルトの骨癒合日数というものがあります。今回はこれを使います。
・中手骨 2週間
・ろっ骨 3週間
・鎖骨 4週間
・前腕骨(橈骨、尺骨) 5週間
・腓骨(下腿の外側の骨) 5週間
・上腕骨骨幹部 6週間
・脛骨(下腿の内側の骨) 7週間
・下腿両骨 8週間
・大腿骨骨幹部(太ももの骨) 8週間
・大腿骨頸部(股関節部の骨) 12週間
以上です。最初にも書きましたが、これは目安です。
患者の年齢などの影響を受けます。
小さい子供ほど骨の成長も盛んなので、成人に比べて2〜3割早く癒合します。
別途、機能回復の期間も必要
また、この日数は骨がくっつくまでの期間であり、実際の機能回復にはさらに多くの日数が必要です。
骨折で長期間の固定をした場合、筋肉や関節も固まってしまいます(拘縮)。
それを改善するためにリハビリなどの期間がさらに必要というわけです。
一般的に、完全に関節運動の機能が回復するまでに、骨がくっつくまでに要した日数の2〜3倍は必要といわれます。
骨折の治癒過程について
骨折は4つの修復過程を経て治癒します。
それが、炎症期、仮骨形成期、仮骨硬化期、リモデリング期です。
これらははっきり区別されたものではなく、それぞれ重複する期間があります。
炎症期
骨折によって骨や血管が離断されると、出血やリンパ液の流出によって腫れ(血腫)を生じます。
その周囲に血液中の線維素によって線維素網が作られます。
この線維素網が、組織の結合に必要な土台となります。
骨折部の出血自体は24時間ほどで止まりますが、血腫のなかでは酵素が働いて血腫を凝固させます。この凝固した血腫が、骨折部分の両端をくっつかせるノリの役目をします。
骨が損傷を受けて24〜48時間をすぎると、患部に血管芽細胞が入り込み毛細血管のもとを作ります。
血管芽細胞は線維素網のところで、線維素と結合して肉芽組織のもとになります。
炎症は続き、膠原線維が組織のなかに浸透し、器質化が始まります。
・関連記事 炎症とは
仮骨形成期
骨折後1週間をすぎると、骨芽細胞という骨を作る細胞が分裂を行い、骨形成が始まります。
その組織のなかに骨細管ができて骨の栄養を供給します。
骨折後3週間くらいから、白血球、リンパ球、血管芽細胞、破骨細胞などの再編成が起こり、骨の中心部(髄腔)も結合します。
さらに結合組織性仮骨には石灰塩が沈着します。ちなみに局所がアルカリ性だとこの力が強く、酸性だと弱くなります。
この段階の結合は、構造が不規則で、骨梁も粗い状態で、完全な骨ではありません。X線像でも骨としてはっきりうつりません。
仮骨硬化期
仮骨形成期を経て、仮骨はやがて吸収と添加作用によって成熟した骨梁となって新しい骨になります。
石灰塩も2〜3倍に増え骨化し、X線像でも仮骨が骨折部を紡錘状に取り巻きます。
骨形成が急速に行われ、炎症反応は消退します。
リモデリング期
リモデリングとは、骨に加わる機械的な圧の量(力学的要請)にしたがって骨の形成・吸収・再形成を繰り返し骨全体の形態が整えられることです。
骨折部を紡錘状に取り巻いていた硬い仮骨は、患部の機能が回復すると吸収・添加作用が進行します。
そして、日常生活に有利な形態に変化していきます。
骨は加えられた刺激によって適応する力があるのです。例えば、骨折によって多少曲がっていても、この能力によっていずれは真っ直ぐに戻るのです。(ねじれてる変形・捻転転位を除く)
この変化を自家矯正、調応能などといい、若い人ほど顕著にあらわれます。
まとめ
骨折がくっつくまでの期間の目安にグルトの骨癒合日数というものがある。
あくまで目安、患者の年齢、全身状態に左右される。
骨折の治癒過程には、炎症期、仮骨形成期、仮骨硬化期、リモデリング期がある。