発育性股関節脱臼は、文字どおり発育あるいは出産の段階で股関節が脱臼してしまう疾患です。
この脱臼は発育の環境によって予防することも可能です。
今回はこの発育性股関節脱臼の特徴、予防法について書いていきます。
目次
発育性股関節脱臼の特徴
出産1000に対して1〜3の割合で発生します。
男女比では1:5〜9と圧倒的に女の子に多いです。
出産の際にお母さんのホルモンによる影響もあります。
また、初産や殿位分娩(逆子)の赤ちゃんに多いです。
先天的素因よりも後天的素因によって発生することが多いです。
症状
開排制限
脱臼している方の股関節の開き具合が悪くなります。
太ももの皮膚溝の非対称
太ももにみられる皮膚の線が左右で違います。
脱臼している方で線が多く、深く、長くなります。
アリス徴候
赤ちゃんを仰向けで寝かせて、脚を曲げて膝の高さを揃えてみましょう。
脱臼している方の膝が低くなります。
テレスコーピングサイン
太ももを持って、脚の引き下げ、引き上げをおこないます。
このとき、脱臼している側の脚では上昇、下降が著明にあらわれます。
オルトラーニテスト(クリック)は危険
膝を完全に曲げた状態で脚を開くとポキッと音がします。
この検査は安全ではないので、お医者さんにみてもらいましょう。
歩行の遅れ
歩き始めるのが遅いことがあります。
また、歩いても跛行がみられる場合は注意です。
トレンデレンブルグ徴候といって、悪い方の脚で片足立ちになったとき、反対側の骨盤が下がる現象があります。
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顔の向き
脱臼している方と反対側を向いていることが多いです。
日頃の様子にも注意してみましょう。
診断
生後3〜4ヶ月ではレントゲンでは大腿骨頭は写りません。
そのためほかの周囲の骨の位置関係から脱臼を推定します。
以下のような方法があります。
・Y軟骨線(ウォレンベルク線、ヒルゲンライナー線)
・オンブレダンヌ線(パーキンス線)
・シェントン線、カルベ線の不一致
・臼蓋傾斜角
X線のほか、エコー、MRIを用いた検査もあります。
MRIは時間がかかるため新生児、幼児に麻酔が必要となる欠点があります。
治療
新生児
抱っこの仕方など育児法に注意して経過観察とします。
乳児期
リーメンビューゲル法(あぶみバンド、パブリック装具)を用います。
このバンドは股関節の伸展(脚を伸ばす)だけを制限し、ほかの運動はおこなうことができます。
これにより、脚の運動を利用して自然に整復(脱臼が治る)ことを目的とした治療法です。
幼児期
まず保存療法を試みますが、歩き始めてから数日が経過したものは手術になることが多いです。
予防
股関節を伸展位(脚を伸ばした状態)で固定すると脱臼を誘発します。
股関節を外から抱えるような抱っこ(横抱きなど)は、脚の動きを制限するのでやめましょう。
赤ちゃんの脚がお母さんの胴体部分を抱えるように、脚が自由に動かせられるような抱っこにしましょう。
また、オムツもウエストのバンド幅が広いものは、同様に股関節の動きを制限してしまいます。
バンド幅が細いものを使いましょう。
まとめ
女の子、初産、殿位分娩(逆子)の赤ちゃんに多い!
先天的素因よりも後天的素因の影響が大きい!
脚の長さ、皮膚溝の左右差に注意!
赤ちゃんの脚の動きを制限したり、脚を伸ばしたままの抱っこはダメ!